北野 博稔
喜一
形ではなく味を追求する大阪らしい擬製料理
精進料理は、 その目的が殺生にあるのではない。 肉食は偏食に陥りやすく、 また身体への弊害も多いとすることからこれを禁忌とした。 同じことが近年では 「糖尿病」 という形で問題となり海外では魚も含めヴィーガン料理となっている。 日本でもこうした料理が求められていることから、 日本料理の季節感ある食材をインバウンドの食客にどう提供すべきかが問われている。 今回の試作にはそうしたことへの提案をみることができそうだ。鮎は日本料理の夏の主役のひとつであり、 子を持った落ち鮎は日本の風物詩でもある。 この子持ち鮎の味わいを擬製 (もどき) 料理風にした一品。 鮎の身肉をつくね芋で、鮎の子は餅粟で。 そして鮎独特なワタの苦味は赤味噌で表している。特筆すべきは焼き鮎らしさへのこだわり。 鮎の形に似せたものをライスペーパーを使い鮎同様に串打ちし焼いている。 料理への愛情を食べ手にも感じさせる一品だといえよう。
総評
「ライスペーパーの使い方には驚いた」 「擬製だからといって、 単に形を追うのではなく、 味を追求していることがよく分かった」 などの評が寄せられていた。 質疑では、 「鮎のにが味」 をさらに出すにはどうすべきか、 また香魚と呼ばれる所以に相応しい擬製料理とはどのようなものか、 などについての意見が交わされた。