1976年生まれ。幼い頃から物作りと、美味しい料理が大好きで、どちらも両立出来る料理人の道を選び、辻調理師専門学校へ進学。卒業後は、料亭をはじめ、様々なジャンルの料理店で経験を重ね、2010年に開業。ソムリエとしての知識も料理に応用し、大阪の新しい味を、日々追求している。
2011年より大阪料理会に参加し、温故知新を自らのテーマに掲げ、料理を考える際は、特に『香りと食感』を大事に考えております。
周年素材としての養殖茸を包丁技で活かす
割烹の大阪では、味だけではなく包丁技で食べさせるのも魅力のひとつとされてきた。今回の試作では、その包丁技で周年使える茸を常とは違った味と魅力を引き出そうという狙いがある。まずひとつは、榎茸を使った束焼きの貝柱見立て。エノキをバラすのではなく、束のままでザク切りとしている。これを鯧の上身で巻き貝柱に見立て粉を付け上下を焼く。
二つ目のエリンギ茸は桂剝きとして、これを細く長く麺状に切り出し、茸出汁にて直炊きにしている。
三つ目の肉厚なる菌床椎茸は鮑見立てとする。一日干し上げたものを戻し昆布出汁で蒸している。冷めたものを包丁で細波(さざなみ)切りにしている。三様の茸を椀種とし、これらの茸の使えなかった部位を全て一度干し、再度これを水で戻したものに昆布を合わせ出汁を引き塩味だけで吸地に仕上げている。彩りとして花びら茸の素揚げを添えている演出も面白い。季節感で味わう天然茸も良いが、包丁技で周年味わえる茸料理というのも現代の大阪料理らしいといえよう。
総評
「養殖の茸だけれど満足感が高い料理に仕上がっている」「茸には食感を味わうというところもあるが、それをさらに包丁の使い方で、その魅力をより増しているのがわかる」。こうした評が寄せられていた。中には「さらにこれを原木で味わいたかった」とする意見が多く聞かれたのが印象に残った。運営委員からは「いろんな意見の中に吸地が少し濃いのではないか、とする声もあったが、私はこれで良いと思う。茸から出汁をとるには、やはり干し加減というものが大きく左右する。鰹を使わないで、これだけの味が出せるのは本当に素晴らしいことだと思う」とのコメントがなされていた。