

松尾 慎太郎
北浜 「孤柳」
大阪府吹田市出身。 調理師専門学校卒業後、浪速割烹「㐂川」で修業12年間の修業後、異ジャンルの料理店での経験を経て、2009年 3月 北新地の堂島中通りに「北新地弧柳」を開業、12年の歳月の後、2021年11月、永年の念願であった風趣を凝らした新築一軒家を大阪らしさが残る東横堀川沿いに落成。
独創的な浪速料理を楽しめる日本料理店「弧柳」をオープン
「弧柳」とは、弧を描いて撓る柳の根のようなしっかりとした“基礎”としだれ柳の枝のような、柔軟に揺れる“発想”の日本料理を基礎とした大阪料理にてお客様に楽しい時間を過ごしていただくきっかけになりたいという想いを込めています。
調味料に頼らず食材から出汁の深みや旨味を引き出す
鱒と鮭はその相違がよく話題にあがる。ごく大雑把に云うならば鱒は鮭よりも、その住みうる範囲が広いということになるだろう。またその鱒については、江戸時代の頃から「河鱒と海鱒では味に於いては河鱒がまさる」とされてきたようだ。生食するならより脂ののった方が優るだろうが焼き魚としての在り方を今一度考えてみたい、というのが今回の試作の目的のひとつなのだろう。
季節の桜鱒をおろし、淡塩をあて粗と中骨は塩焼きにし出汁をとる。出汁をとった粗等の身を田舎味噌と共にミキサーでつぶし、先ほどの鱒の出汁で伸ばし味噌だれを作り、掛け焼きとしている。付け合わせには山菜。ワラビは戻して八方出汁で焚く。蕗の薹は、湯がいた後に原木椎茸と共に胡麻辛子浸しとしている。切り出した櫻鱒を焼き台で味噌だれを掛けながら焼く。いかにしっとりと焼き上げるかがポイント。ここでは数度の掛け焼きを行っているが、最後の焼きの時点で初めて芯に火が入るように計算されている。焼くことの所作の中にも、味に繋がる緻密な計算が感じられる。まさに客前ならではの関西割烹の仕事といえよう。
総評
「味噌焼きといえば、どうしてもパサついたイメージがあるが、今回の味噌焼きは非常にしっとり仕上がっており驚かされた」といった評が多く聞かれた。運営委員からは「しっとり味の秘訣はいろいろあるだろうが、味醂を入れるとどうしても硬くなりがちなので、焼きだけでなく味噌だれの調味法によってもしっとり感が変わってくるのだろう。いずれにしても手早く掛け焼きし、焼き上げたものをその場で供する割烹仕事を皆でもっと探究していべき」とのコメントが寄せられていた。

