泉州新玉葱の擂り流し

前田 武徳
味菜旬香「菜ばな」  

新玉葱の瑞々しさが際立つ大阪らしい冷製椀

国産の玉葱発祥は大阪府の泉南地域である。昭和初期には産出量が日本一となったが、玉葱そのもののブランド力は現在は淡路島にその座を譲っているのが実情だろう。海外から入手した雑ぱくな玉葱の種子を元に今井伊太郎氏らが、長い年月をかけ独自に品種改良した並々ならぬ努力は再度評価されるべきものがあると思われる。
今回の試作では、そんな泉州玉葱の中でもいわゆる新玉葱と呼ばれる早採り玉葱を使用している。もともと約9割が水分とされる玉葱の、その瑞々しさを活かした擂り流しとなっている。先ずは使用する玉葱の半量をラップしレンジで火入れする。櫛切りにしておいた残り半量は昆布出汁と共に煮込んでいる。次に玉葱と相性のよい蛤の出汁を乳化させ、擂り流しにしておいた玉葱汁と共に鍋に入れ白味噌を加えあたりをつけている。椀種には卵黄とわらび粉の玉子豆腐。椀には玉子豆腐の他に、蛤や蕨そしてこごみを盛りつけ季節感を演出。またあえて冷製仕立てとすることで、玉葱本来の甘味と旨味が一層際だっているともいえよう。

総評

「春らしさだけでなく、見た目の美しさにも配慮されている」「玉葱らしい優しい甘味が見事。また白味噌との相性の良さにお驚かされた」などの評が多く寄せられていた。
運営委員からは「いわゆる玉葱臭といった感じが全くないだけでなく、なめらかさ加減も申し分ない仕上がりとなっている。さらに、玉子豆腐にわらび粉といった取り合わせもユニーク。ただ一点、盛りつけに玉葱の形を残したものがあればさらに良かったのでは」とするアドバイスがなされていた

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