月見団子仕立ノ揚げ物四種盛

上野 修
浪速割烹 㐂川  

令和の月見団子の在り方を味と彩りで表現。

月見団子の名から、団子を供える習わしがよく云われるが、その団子こそが里芋であったことは次第に忘れ去られようとしている。早生の里芋を供え、ススキを稲に見立てることで、これからの豊作を合わせて祈願する。よって供えられる里芋の形状を模した団子の在り方も時代と共に移り変わってきたといえよう。
大阪では昭和に入り、里芋そのものをさらに団子に近づける試みがなされた。つまり石川早生の中から球状のものだけを選抜した中野早生が誕生し、品種登録され、その種芋が全国へ出荷されたのである。
さて、ここではそうした擬き里芋団子が大阪料理として四種披露された。ひとつは、鶏肉と椎茸等を新挽粉で合わせたもの。次に、帆立と干し帆立等を片栗粉で団子状にしたもの。そして秋の栗と銀杏を同じく片栗粉で寄せたもの。最後が、子芋と才巻海老等を片栗粉で団子にしたもの。これら四種の団子を、馬鈴薯をオーブン焼きしたものをミキサーにかけ、淡口と味醂そして鮒鮨の飯で調味。これに菊菜のピュレを合わせてソースとして敷いている。
昔から各家庭でも行われてきた仲秋の名月を愛でる行事は、すなわち月に日々の感謝する「月祀り」を行うことでもあった。こうした習わしが家庭から失われた現代においては、その心を料理屋が料理の中に継いでいくことが求められていると云えよう。

総評

「非常に彩りの美しい月見団子だと感じた」「全てに味わいが異なり面白かったが、中でも帆立の月見団子が面白く感じられた」などの評が寄せられていた。
畑会長からは「ただ丸いというだけでなく、団子にもいろいろある。大阪的な団子というのは、どのようなものだろうか。そうしたところにも工夫が欲しかった」とのアドバイスなどもなされていた。

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