八月鱧二種競味

早川 友博
小嘉津
1976年、岐阜生まれ。ご本人曰く「田舎育ち」。辻調理師専門学校を卒業後、大阪・北新地にて昭和27(1952)年に創業した『小嘉津』に入る。2011年、35歳で同店を引き継いで、三代目となる。19年に現在の地に移転。華美に走らず、質実な日本料理の正道をいく、生真面目な職人気質。昔ながらの食材や古い料理にも関心が高い。

大阪食文化に裏打ちされた手法で八月鱧を活かす。

鱧といえば関西では京都祇園祭の頃が旬と考えられているが、鱧には二度の旬がある。ひとつは産卵前の7月頃。そしてもうひとつが10月頃の秋鱧。6月~10月まで漁が続く鱧だが、産卵直後の8月の鱧だけはどうしても脂が落ち旨味も半減。今回は、そんな8月の鱧をどう活かすかということを考えた試作二品である。ひとつは「焼鱧のオイル漬け」。鱧を常のごとくにおろし骨切りし、串を打って強めの塩をあてておく。この鱧を少しこげが着く程度に白焼きにする。焼き上がった鱧の串を抜いていったん冷まし、一口大に切り、これを油に一週間程度漬けるのである。漬けあがった鱧を油から出して、無花果と合わせて盛りつけ、酢味噌等を添えている。
そしてもう一品が「鱧ざく」である。鱧を同じく下処理し骨切りしておく。バットに生の鱧身を広げて、上から油を注ぎ入れ一晩休ませる。油から取り出した鱧に串を打ち、照り焼きにする。これに青瓜を雷干ししたものとを合わせ、土佐酢を掛け鱧ざくにしている。いずれも鱧に油を加えるのは同じで、焼いてから漬けるか生のまま漬け置いた後に焼くかの違いによる変化で料理法を考えるという狙いである。大阪では天神祭に鱧を食すが、その料理法は照り焼きが多く、生鱧の料理が増えてくるのは秋からであった。そうした食文化を踏まえると、こうした八月鱧の活かし方も見えてくるのではなかろうか。

総評

「八月時期の鱧にしては皮が柔らかく感じられた」「冷めた状態では硬くなるのではと思ったが、予想外に柔らかく驚いた」などの意見や感想が寄せられていた。
運営委員からは「鱧に油を足す、という発想は面白い。ただ、単に油を足すということではなく、どのタイミングで油を加えるのが最もよいか。もし油を加えるなら、フレーバーオイルなど様々な可能性を試してみてはどうか」とするアドバイスも寄せられていた。

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