

城崎 栄一
旬屋 じょう崎
福岡県出身。神戸、奈良で修業後平成7年4月に吹田駅近くにお店を開業。魚菜の会で大阪産の食材を知り地元の吹田くわいなど伝統野菜、淀川天然うなぎ、能勢牛などを積極的に取り入れ会席と一品料理の両方を供する。スチームコンベクションを駆使して食材の最適な温度帯を探り現代的な日本料理と昔ながらの古典的料理を追求している。
郷土料理を料理屋風に仕立て名物料理とする
冬の関西家庭料理の定番に、ブリ大根がある。「関東の鮭、関西の鰤」とされてきた関西好みのブリの旨さを堪能できる味わいのひとつともいえよう。今回はこのブリ大根を料理屋風に仕上げるなら、しかも大阪料理として見直すなら、どうあるべきかといった狙いがあったように思う。
先ずは大根には、大阪好みの田辺大根を随所にふんだんに使用している。田辺大根の持ち味を料理の中でもっと主張させたい、といった思いが強く感じられる。田辺大根はいわゆる辛味大根だが、熱を加えることでその辛味が甘みや旨味へと変化する大根。ここではこの田辺大根を先ずは大根卸しとし、ブリの身を浸け込んでいる。強烈な辛味はいわば強い消化酵素の裏付け。ブリの身をソフトにさせた後、これを合わせ醤油に漬け込んでいる。
ブリ大根用の田辺大根は数センチ程度の厚さの円にとり、これを90度で40分ほど茹でる。あえて沸騰させずに大根の旨味を残しながら柔らかく熱を加えていくのである。次に田辺大根の干した皮とブリの粗そして真昆布でとった出汁を調味した地に大根を入れ同様に熱を入れていく。刻んだ大根と玉葱を炒め大根の皮と昆布出汁と共にミキサーにかけ、豆乳と白味噌そして胡麻等で豆乳餡を作る。ブリは照り焼きとし焚けた大根をのせ豆乳餡を張り仕上げている。食してすぐに美味いブリ大根ではなく、食後に大根の旨味と鰤ならではの味わいが湧き上がってくる、まさに料理屋のブリ大根といえよう。
総評
「ブリ大根の強い味付けにはブリの臭みを消す狙いもあると思うが、この料理の豆乳餡は非常にブリの旨さを引き出している」といった評が聞かれた。運営委員からは「田辺大根の旨さがよく分かる仕上がりとなっている。90度で熱を入れていることで、少し大根の固さが気になる人もいるかもしれないが、それは好みの問題としていいではないか」とするコメントに加え「料理屋仕立てでは、どういった順序で食べてほしいかなど、食べ手に分かりやすい盛りつけにも配慮がほしい。せっかくの料理なので、この料理ならではの盛りつけ方にもひと工夫があれば」とのアドバイスも寄せられていた。

