蛸火入れ三様煮

岡本 健二
辻調理師専門学校  

大阪府生まれ。高校1年の時に始めた割烹料理屋でのアルバイトがきっかけで料理の魅力を知りました。高校卒業後は辻調理師専門学校に入学し、その後同校に勤務。日本料理の魅力はシンプルな仕立ての中に、食材の美味しさを最大限に引き出す奥深さがあると考えています。大阪料理会では毎回驚かされる発想に刺激を受け、学生指導にどのように還元できるかを考えることが、私の活力となっております。

加熱具合で変化する蛸の新たな食感を極める

タコ焼き人気によるものか、大阪といえば蛸というイメージが強い。しかしタコ焼きに使用されているのは、熱を加えても固くなりにくいモーリタニア産で、タコの食感にこだわるのが大阪的だともいえよう。
今回の試作は、まさにそんな加熱具合でタコの食感を極めたいという取り組み。先ずはタコの昆布水煮。ここではサッと霜ふりした足を冷水に落とし水切りした後に、昆布出汁に一晩浸けた後、真空袋に入れスチコンで53℃という低温で30分の加熱が試みられている。
次に、タコの油煮。ここでは切り分けた足を同じく霜ふりし冷水にとり、米油(木ノ芽含)を使ってスチコンで63℃の50分加熱している。
そして3つ目は、焼きタコの早煮。ここも同様に下処理した足の表面に油を塗り、スチコンで130℃で75分加熱。これを煮汁で30秒間だけ煮て、漬け込む要領でそのまま冷ましている。
三様の火入れ加減が生み出す、それぞれの食感と味わいの妙。また軟らかさだけでなく、鮮度が大きく関与するとされてきた皮までも、さらに美しく仕上げたいとするこだわりに大阪料理らしさが覗える。

総評

「タコを軟らかくするにはダイコンで叩くなどが伝承されているが、火入れそのものにもまだまだ知られていない多くの事があることが分かった」「熱の入れ方の変化で、これだけの食感の違いが体感できることに驚いた」とする評が多く寄せられていた。また運営委員からは「面白い試みであっただけに、同温度帯による火入れ時間の差という点にも着目してもよかったのではないか」「焼きタコの早煮の味の入り方は見事。焼きタコというのもさらに探究すべき」といったアドバイスもなされていた。

Please share if you like it.
  • URLをコピーしました!