

辻 宏弥
法善寺 浅草
1978年、大阪生まれ。同志社大学法学部を卒業後、銀行員を経て、『神戸たん熊』で日本料理の世界へ。2011年、昭和12年創業の『法善寺 浅草』に入り、四代目店主となる。持ち前の勤勉さで、スッポン・フグ・鱧料理を得意とする割烹の料理を進化させ続けている。
和食の包む魅力をさらに拡げる逸品
河川環境の改善等に伴い、国産の蛤や浅蜊などが徐々にではあるが増えてきている。最近では千葉県産の蛤が量販店にもならぶようになった。大阪と蛤といえば、その昔には住吉の浜や泉州の堺の浦などが蛤の名所として知られ、大阪料理にもそうした貝類が使われ春味を競ったようである。
今回の試作は蛤の定番料理のひとつである酒蒸しを今様のパイ生地に包んだ一品となっている。生地は、強力粉や薄力粉とラードによる水皮と薄力粉とラードの油皮を用いたもの。蛤は酒蒸しにしたものを身と出汁に分け、出汁で葛粉を煉って固めている。水皮と油皮同量にとったものを、水皮に打ち粉をし伸ばした後に、油皮で包むという二層構造に仕立ているのが面白く、また通例の包物とは異なった食感も、今回の料理の大きな魅力となっているといえよう。雛祭りはもちろん、春だけではなく季節毎の食材を包んで楽しむことができる汎用性に富んだ大阪料理といえよう。
総評
「さくさくしたパイ生地を思わせる食感が見事」「とても応用の効く料理で参考になった」などの賛辞が多く寄せられていた。畑会長からは「今回は春ということで蛤が使われていたが、野菜でも白身魚でも使えそうな包み料理。ただ包むという概念からすれば主役であるはずの蛤の存在感が薄かったのは残念だったが、私的にはフグの白子などで是非食してみたいと思うほど魅力的な料理であった」とのコメントがなされていた。




