

片山 城
心根
1975年、大阪府交野市生まれ。「旅館をやりたい!」という夢に向かって大学で法学を学び、法律事務所に1年務める。「料理ができなアカン」と『魚匠 銀平』など居酒屋や魚料理店で約10年修業を積み、2009年、枚方に『心根』を開店。そして18年に大英断。高槻駅から車で30分の山間部に移転、古民家を改装し、リスタート。地元の山の幸を主とした“鄙のもてなし”で人気を博す。2024年、農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」ブロンズ賞を受賞。
名残と旬を迎える食材との出会いで生まれる真味
鎌倉時代の和歌集に「秋茄子をわささの粕に漬けまぜて、嫁にはくれじ棚におくとも」の有名な詠がある。秋茄子は嫁に喰わすな、の元ネタとされているが、決して悪意あるものではなさそうである。わささ、とは酒のことで酒粕漬けのようなものだろう。ただ、秋茄子は旨いけれど身体を冷やす懸念があったことから大事な嫁には食べさせられない、と解釈すれば万事が丸く収まるようだ。さて、そんな秋茄子に、身体を温める猪肉を合わせたのが今回の山家風試作料理。秋茄子を炭火で丸焼きにする。そしてこれを水に落とすことなく直に手で皮を?き、吸地八方に浸けている。秋茄子に合わせるのが落花生。塩水に入れて湯がき、これを先の茄子と共にミキサーにかけ、塩とナツメグで調味するのである大阪産に猪肉は芯温を65℃に保って1時間程度の低温調理を施している。次に同肉の脂身に包丁を入れ、中火の炭火にかけ、脂身にカリッとした食感が出たら、最後に全体を強火で味噌幽庵焼きとして仕上げるのである。器に猪肉を盛り秋茄子と落花生のピュレを鞍掛けにし、天には蒸し栗を削り掛け。野韮の花を散らす。秋茄子とは何かを知り、食べ手の身体を考え、去りゆく名残の食材と来るべき旬の食材を見事に調和させた大阪料理。食する人の心を秋深き里山へと誘う、まさに傑作と云っても過言ではない料理である。
総評
「どの食材も見事なバランス」「茄子にナツメグがこんな合うとは」「レシピなどどうでもよくなると感じさせてくれる料理」などの賛辞が多く寄せられていた。運営委員からも「味噌のこがし方や肉の微妙な柔らかさ加減への心配り。これぞ山の恵み」との評がなされていた。




