春魚菜ノ苦味調和

岡本 健二
辻調理師専門学校  

大阪府生まれ。高校1年の時に始めた割烹料理屋でのアルバイトがきっかけで料理の魅力を知りました。高校卒業後は辻調理師専門学校に入学し、その後同校に勤務。日本料理の魅力はシンプルな仕立ての中に、食材の美味しさを最大限に引き出す奥深さがあると考えています。大阪料理会では毎回驚かされる発想に刺激を受け、学生指導にどのように還元できるかを考えることが、私の活力となっております。

春に人を魅了する苦味の秘密に迫る

食味は、酸・苦・甘・辛・鹹(塩)の五味が基となってはいるが、要はその調和にあるとされる。今回の試作では、春の魚菜である新玉葱、そして桜鯛の持つ旨味が苦味と、どのような調和関係にあるのかを見いだすことで、そこから新しい大阪料理へのヒントを得ようとする意欲的な試みといえよう。

先ずは「新玉葱の摺流し、蕗の薹の忍び仕立て」。蒸し上げた新玉葱をミキサーにかけ、水・酒・昆布で引いたアサリ出汁を加えて攪拌。蕗の薹は葉と蕾に分け、各々を銅鍋で茹で、葉は荒刻みに蕾は細刻みとし、あたり鉢にて太白とすり合わせ調味。アサリの身は粗叩きとし混ぜ合わせている。次に「桜鯛と茶葉ノ玉露油掛け」。上身にした鯛の皮をひき薄塩をあてておく。水気を取り除き昆布に挟む。昆布出汁に茶葉を入れ、葉が開くと濾し茶出汁をとり調味しウルイと菜種を漬ける。茶葉の半量を使い太白油と共に攪拌し濾し玉露油とする。また残りの茶葉は粗く刻みアオサ塩をまぶす。そぎ造りにした鯛身に玉露油を塗り茶葉を合わせている。いずれも春の旨味を春の苦みが引き立てる趣向となっている。

古代中国の五気論に曰く、五味はそれぞれに身体へ入るところあり、苦みは心に入るものなり、としている。それだけに苦味は奥深く時に食べ手を魅了するのだろう。

総評

「苦味と甘味との関係性がよくわかるだけでなく、色味の美しさも感じさせる料理だと思う」「試作ながらも料理の持つ高度な上品さが食べ手に伝わる料理」などの評が多数よせられていた。

運営委員からは「蕗の薹の扱いが面白かったが、茹でるのではなく揚げるといった手法も試していいのではないか」といった声。また畑会長からは「上品で精細な料理そして様々な試みを秘めた料理だけに、食べ方や味わい方といったことを食べる側に伝わるよう考慮する必要がるのではないか」とのアドバイス」がなされていた。

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