魚庭アコウ素麺包蒸し椀

板倉 誠司
旬菜 喜いち  

1972年、大阪府東大阪市生まれ。調理師専門学校卒業後、大阪府内や奈良の割烹、和食店で修行し、2008年に独立。地元に『旬菜喜いち』をオープン。毎日市場に出向き、納得のいく食材のみを仕入れ。素材本来の美味しさを引き立てる味付けにこだわっている。

魚庭アコウの価値と魅力を再発見させる料理椀

大阪ではアコウは昔からよく「夏の河豚」とも呼ばれ、それがためがどうか分からないが、よく薄造りにされてきた。確かにアコウは大阪では夏を旬とする魚で、アコウ鯛とも云うけれども鯛ではなくスズキ目のハタ科に属しクラス的には鯛よりも上に位置づけられる。いわば冬のクエと並んで夏のアコウとされ、その味わいもクエと同じく年中大差はないともいえよう。そのようなアコウはクエ同様に、しっかりした肉質だけではないもうひとつの大きく魅力を供えている。それがコラーゲンである。つまりはスッポンなどと同様に、頭や中骨などの出汁を利用することで上品なスープ(椀物)に仕立てることができるのである。

ここではまさにそうした試みがなされている。アコウは三枚におろした後、粗骨には強塩をしておく。身肉はしばらく塩をあててから水洗いし骨を抜く。次に素麺を束の状態を保たせながら茹でて洗っておく。強塩しておいたアコウをよく粗い、沸騰した湯で数分ボイルし身を掃除する。このアコウ出汁に野菜出汁を加え調味。また先ほど骨抜きしておいた上身を使って、束状の素麺を巻き蒸しておく。これを椀に盛り込み、スダチと芽ネギを盛り込み、アコウと野菜の合わせ出汁を張るのである。シンプルながら夏を感じさせてくれる滋味深い料理だといえよう。

総評

「なんとも優しい味わい」「魚で素麺を巻くという驚き、しかも素麺がのびていない」「アコウ出汁に野菜出汁を加えるとこうなるのか、という発見があった」などの声が多く寄せられていた。

畑会長からは「料理そのものもさることながら、椀内に広がる白という色合いの夏らしさが素晴らしい。魚庭アコウという食材を再発見させてくれる試作であった」とのコメントを寄せていた。

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